ネコのてんかん発作は、ほとんどが、原因不明の髄膜脳炎やウイルス感染にともなう髄膜脳炎、脳腫瘍や赤血球が異常にふえる真性多血症、あるいは交通事故などによる脳挫傷などに起因するものと考えられている。つまり、脳内に明らかな異常、障害のある「症候性(続発性)てんかん」が主流で、犬に多い、原因不明の「原発性(特発性)てんかん」はほとんどない。
「原発性」と「症候性」では、ある程度、発作のおこり具合が異なっている。「原発性」は、脳の内奥で発生した電気的興奮が表層の左右脳に伝わり、一挙に全身がはげしい痙攣(けいれん)にみまわれることが多い。「震源地」が脳の内奥のため、内部の状況を検査することがむずかしい(左右脳には異常、障害がない)。このような発作は、大型犬などにしばしばみられ、失神状態で口から泡をふき、糞尿をまきちらしながら、ガクガクガクと全身を強く痙攣させたりするので、肝をつぶす飼い主も多い。
一方、ネコに多い「症候性」では、左右どちらかの脳に、発作をひきおこす異常、障害がひそんでおり、まず、その周辺におこった電気的興奮で、からだの一部分、たとえば、顔面がピクついたり、どちらかの側の手足が痙攣したり、眼球に異常が現れたり、口をクチャクチャしだしたりして、その後、脳内の電気的興奮が左右脳にひろがり、はげしい全身痙攣をおこしたりすることが多い。また、発作がくり返されるうちに、当初、片側の脳半球だけにあった異常、障害が、反対側の脳半球に現れることも少なくない。なかには、意識をなくしたまま、突然、飛んだり、はねたり、駆けまわったあと、痙攣発作をおこすネコもいる。
なお、はげしい発作のあとは、脳神経細胞もからだの筋肉もぐったりとして、意識が朦朧とした状態がしばらくつづき、そのまま眠りこんでしまうこともある。
*この記事は、2000年11月15日発行のものです。
監修 渡辺動物病院副院長 渡辺直之氏「てんかん発作をおこす」より転載。